「漢方薬」いうと、なんとなくとっつきにくいという感覚の方が多いのではないでしょうか? ましてや「中国医学」ということばはほとんどの方が聞いたこともないと思います。 それほど日本ではまだまだなじみの薄い医学ですが、現代中国においては、西洋医学と中国医学とで、ほぼ同じくらいの患者数があり、メジャーな医学なのです。 
 中国では漢方薬専門の医大があり、そこで数年かけて学問と臨床を積まなければ漢方の医師になれません。 もちろん漢方と西洋医学の併用などは日常茶飯事です。 西洋医学の長所と、中国医学の長所をうまく融合させた治療が行われているというわけです。

中国医学って?

 西洋医学のよいところはなんといってもカラダのすみずみまでカメラや手術で悪いところを実際に「目」で見て、超音波、また血液をとって数値的に検査でき、お薬は即効的に効くものが多いということではないでしょうか。そして診療もどんどん細かく専門の科に別れ、より詳しく診察できることも特徴です。
中国医学では、1つの臓腑の状態、2つ以上の臓腑間のバランス、住んでいる環境や自然界との調和などが崩れていないかを調べます。調べる方法は症状、皮膚・舌・脈・の状態などを細かく観察します。また、お薬は植物、動物、鉱物など自然界にあるそのままの素材を使い、即効性のある生薬もありますが、多くはおだやかに効くものです。そして中国医学で最も重視するのが先に述べた「調和」です。カラダ内部の調和、自然界との調和を取り戻すことで自然と病気や症状が改善したり、病を予防したりします。これが「漢方はカラダに無理なく効く」理由です。

人体内部にも宇宙がある

 私たちが住んでいるのは無限に広がる大宇宙の中の地球という、たった一つの天体にすぎません。銀河系だけをみてもそれぞれの惑星が微妙なバランスをとりながら、その存在を保っています。地球の内部でも大自然の動植物がお互いに関係しながら生態系を形づくっています。光があり、風が吹き、雨が降り、火が燃え、植物が育ち、動物が生活する。不必要なものは何一つありません。
 私たちの体の中にもこの宇宙や大自然にあるような法則性が存在します。中国では古代から自然の法則性を観察することにより人体内部ににも自然界と同じような法則性があると考え、それを何千年かけて研究と実践を積み重ね、中国医学という学問にまで発展させたのです。例えば、宇宙全体のことを知ろうとしたときに地球だけを見ていたのでは宇宙のことはわかりません。人体内部も同じです。一つの臓器のバランスを改善しようとするときは、必ず他の臓腑との関係を調べます。
 このように
人間の内部にも、外部にも宇宙があり、人間も自然の中の一部である、というのが漢方の思想の根底に流れています。とかく人間は自然界を思い通りにコントロールしたがります。しかしそうすることにより、どこかに必ずひずみが生じることをもっと深く考えなければなりません。 

摩訶不思議な漢方薬?

 漢方薬というとなんとなく 「うさんくさい」 というイメージをお持ちの方もいるのではないでしょうか? 実は私自身も本格的に中国医学を学ぶ以前はそんなイメージを抱いていたこともありました。 しかし深く学ぶにつれ、次第にそんなイメージは変わってゆきました。 というのも中国医学というのは哲学的ではあるけれど非常に理路整然とした理論に裏づけされた学問であったからです。 そこには生理学、病理学、生薬学、方剤学、診断学などがあり、大学ではそれらを体系的に医学生たちが学んでいます。
 時に、「漢方は科学的でないから信用できない」 ということを聞くことがありますが、「科学的」とはいったいなんでしょうか? 漢方を 「科学的」に検証しようと 漢方薬の中のひとつの化学成分を抽出して、それをマウスに与えて効く、効かない、などという実験がはやった時期がありましたが全くナンセンスな話です。 たくさんの種類の生薬が混ざった漢方薬からある一つの成分だけを取り上げて、その有効性を試験するなんていう発想を本当に科学者がするのだろうか?と思ったものでした。 科学は科学として重要な学問ですが、この世の全てを「科学」という物差しで計る必要が本当にあるのでしょうか?
 話はそれましたが、漢方薬とは 「うさんくさく」も「おどろおどろしく」もない、非常に理論的な医学であるということを記憶の片隅にメモしておいてください。

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